令和4年9月定例会 一般質問 質疑記録(速報版)

(質問者;畑原勇太)
 皆様、こんにちは。自由民主党の畑原勇太です。
 安倍元総理の突然のご逝去は、日本のみならず、世界を震撼させました。
 選挙演説中に銃撃との速報、そして、想像だにしなかった訃報は、まさに青天の霹靂でした。
 父・基成が亡くなった際には、総理在任中の激務の中、錦町の自宅を2度にわたって訪れ、私たち家族を元気づけてくださいました。
 また、私が父の志を引き継ぎ、県議会議員として、岩国・和木地域と山口県のために全力で取り組む決意をした時には、応援メッセージを寄せてくださり、大きな力添えをいただきました。
 日本国のリーダーとして長きにわたり力強く国を率い、世界の平和と安定にも大きな足跡を残された、その比類なきご功績に、改めて、敬意と感謝の意を表しますとともに、衷心より追悼の意を表します。
 質問に入ります前に、岩国基地問題について一言申し上げます。
 私が、父の跡を継ぎ、県議会議員として政治の世界を歩みだした平成30年、時を同じくして、米軍岩国基地において、空母艦載機部隊の移駐が完了し、岩国基地を巡る米軍再編の大きな動きが、一つの節目を迎えました。
 私の父は、空母艦載機の移駐をはじめとした岩国基地の諸課題について、基地議連を代表し、県や関係市町とともに、国に必要な対応を求め、県への基地交付金の創設など、基地の負担に見合う地域振興策の実現に尽くしてきました。
 私は、こうした父の実績や思いをしっかりと受け継ぎ、基地反対を訴えるばかりではなく、基地があること、そしてこれからも続く基地の負担という現実に目を向け、何よりも地域のためにという姿勢で、岩国基地に係る諸課題に真摯に取り組んできたところです。
 特に、基地議連が中心となり、積み重ねてきた取組の成果として実現した、県への交付金に関しては、地域住民など地元のニーズを踏まえた施策や事業への有効活用について、登壇の場をはじめ機会あるごとに、執行部へ求めてきました。
 県交付金の活用により、産業や生活の基盤となる道路や港湾の整備をはじめ、地域の拠点となる県立武道館や産業振興センターの整備に向けた道筋が確かになるなど、まさに県交付金があるからこそ実現が叶うものであり、基地周辺地域の発展に確実につながってきています。
 私としても、引き続き、県交付金による地域振興策が、地域住民の皆様にしっかりと目に見える形で実感していただけるよう、交付金事業の充実に尽力していきたいと考えています。
 一方で、現在、日本の外交・防衛を取り巻く環境は大きく変化をしています。
 ロシアによるウクライナへの侵略をはじめ、中国や北朝鮮による軍事活動の活発化など、厳しさを増す安全保障環境を踏まえ、政府において、我が国の防衛力を5年以内に抜本的に強化する方針が示されました。
 今後の政府の取組によって、米軍岩国基地を抱える山口県にどのような影響が生じてくるのか、しっかりと注視していかなければなりませんが、基地問題に関しては、基地を抱える自治体が、まずは日本全体の平和と安全を守るため、政府が進める外交・防衛政策を尊重し、協力する立場に立つのは言うまでもありません。
 その一方で、基地周辺住民の安心・安全を最優先に考え、艦載機移駐により増大した航空機騒音や事故等への不安など、住民の皆様の声にしっかりと耳を傾け、基地周辺地域の抱える負担と国防への協力・貢献に見合う、十分な安心・安全対策はもちろんのこと、地域振興策の更なる充実を求め、実現していかなければなりません。
 私は、今後とも、岩国基地にかかわる諸問題について、地元選出の県議会議員として、誰よりも大きな責任を持って、その解決に全力を尽くしていくことを改めて決意し、通告に従い、質問させていただきます。

 まず、「脱炭素化に対応する水素社会実装の推進」についてお尋ねします。
 先月末、周南コンビナートをカーボンフリーアンモニアの供給拠点として整備することを目的に、周南コンビナート4社が国に共同提案していた基本検討事業が採択されたとの発表がありました。周南コンビナートの産業競争力の維持・強化と脱炭素化の両立に向けた足がかりになるものと大いに期待しています。
 一方、本県の3つのコンビナートのひとつにも数えられる岩国・大竹地区は、周南地区と異なり、原燃料などのつながりが比較的少ないという状況です。このため、各工場が単独で、非化石燃料の混焼検討や混焼率アップなど、脱炭素化に向けた検討が行われていますが、現実的な選択肢として検討が進められているのが、燃料のLNG転換によるCO2排出量の削減です。
 ところが、岩国地区は、都市ガスのパイプラインが通っていないため、ガスを利用するためには、各社が、ローリーでの輸送と新たなタンクの設置という、他の地区であれば必要ない、追加の投資が必要となります。このため、地元企業からは、ガスパイプラインの導入に対する強い要望があり、県に、その調整役や支援を期待する声を様々な場面でお聞きしています。現在、県では、産業団地を造成する計画を進めておられますが、ガスパイプラインの敷設は、まさに産業基盤の整備であり、産業団地内の道路や上下水道などの整備と同様のものだと考えます。県には、脱炭素化に直面する地元企業のこうした声を正面から受け止め、今後策定を進められる「やまぐち産業脱炭素化戦略」にしっかりと反映していただきますよう、お願いしておきたいと思います。
 また、脱炭素化に関して、地元企業からお聞きしたのは、「正直なところ、脱炭素と言われても、先の見えない暗闇を手探りで進むようなものだ」という声です。同時に、「CO2削減量はボイラーなどの燃料転換に比べ少ないものの、FCフォークリフト導入の実証など具体的な提案は大変ありがたい」との声もお聞きしました。
 副生水素の供給ポテンシャルが高いという地域特性を有する本県では、全国的にも比較的早い段階から水素の利活用に取り組んでこられたと承知しています。一方で、6月定例会で我が会派が取り上げたように、せっかく県内企業が研究開発した製品が、地元で活用されていないのは非常に残念なことです。
 私は、産業政策を進める上で肝要なのは、現場の声を聞くことだと考えます。全国をリードする水素先進県を目指すのであれば、まずは地域、そして実際に関連産業に参入しようとする企業の声をしっかりと受け止めることが重要です。
 脱炭素、そして、ロシアのウクライナ侵略に端を発したエネルギー危機により、商用車や産業分野での水素利用、水素発電の導入、水素輸入に向けたサプライチェーンの検討等の動きが、世界中で進展しつつあります。県には、これまで積み重ねてきた水素の取り組みを無駄にすることないよう、一歩一歩着実に、水素社会の実現に向けた取り組みをリードしていただきたいと考えています。
 そこでお尋ねします。
 脱炭素化という大きなうねりを前に、本県における水素社会実装の推進に、今後どのように取り組まれるのか、ご所見をお伺いします。

 次に、「政府関係機関の地方移転を生かした産業振興」についてお尋ねします。
 政府関係機関の地方移転は、故安倍元総理のもと、まち・ひと・しごと創成総合戦略で掲げられた地方への新しい取り組みの一つとして進められたものであり、その一環として、私の地元岩国市に、防衛装備庁艦艇装備研究所の新たな試験評価施設、「岩国海洋環境試験評価サテライト」が整備されました。私は、この施設が本県に整備される経済効果を一過性のものにせず、持続的なものとすべきとの思いから、起工式が行われた直後の令和元年6月県議会で、この施設を生かした産業振興について質問させていただきました。
 その後、整備は順調に進み、昨年9月の竣工以来、防衛装備庁による研究が実施されており、また、この施設に対する企業や若者の関心を高めるため、県と市が誘致した「第8回水中ロボットフェスティバル」が、8月28日に開催され、ジュニア部門では県内の高校生チームが優勝するなど、大いに盛り上がったとお聞きしています。
 一方で、竣工から1年余り経過したものの、この施設の移転の目玉の一つである「地域との連携」という面では、この施設を活用した民生分野での研究開発には未だ着手できておらず、地元の期待には、まだ十分応えきれていないのではないかと感じています。この施設の研究分野である水中無人機、いわゆる水中ロボット、水中ドローンは、労働力人口の減少に伴う潜水士の不足をはじめ、ダムや洋上風力等の発電プラント、橋脚、水道管や、港湾部の水中工作物等のメンテナンスなど、活躍が急がれる分野が多くあり、その需要は今後も拡大していくとされています。私の地元岩国市でも、陸上でドローンを活用した様々な取り組みを進めてきた企業が、新たに水中でもドローンを活用した測量や点検などに取り組もうとされており、一刻も早いこの施設の利用を心待ちにされています。県には、この施設の民生分野での活用に向け、なお一層のご尽力をお願いします。
 水中ロボット関連産業は、国内を見渡しても、まだまだ未開拓の分野であり、今後の大きな成長が期待できる分野でもあります。県には、県内における水中ロボット関連技術への理解や普及を図るとともに、広く県外にも目を向け、ニーズやシーズの発掘を進めていただきたいと思います。また、それらを本県で新たな産業として花開かせるためにも、この施設と連携し、民生分野の開発を下支えする研究体制を構築していくことが必要だと考えます。
 そこでお尋ねします。
 艦艇装備研究所・岩国海洋環境試験評価サテライトの開所を契機に、本県の水中ロボット関連産業の振興に、今後どのように取り組まれるのか、ご所見をお伺いします。

 次に、「資材高騰下における地域資源の有効活用」についてお尋ねします。
 ロシアによるウクライナ侵略や世界的な気候変動、投機目的の買い占め等により、様々な資源や資材の流通が世界的に不安定になっており、また、我が国では、円安も相まって、過去にないレベルで資材の価格が高騰し、その調達が困難なほどの状況になっています。その中でも、特に、畜産経営に不可欠な配合飼料の価格高騰が著しいことから、我が会派の代表質問でも取り上げ、県に対応を求めたところですが、私自身も、直接、生産者の皆さんから、その厳しい状況をお聞きしています。
 しかし、こうした資材の不足や高騰は、畜産をはじめとした農林水産業の分野にとどまりません。我が国は、食料はもとより、原油や鉄鋼資材、半導体など、私たちの生活に不可欠な数多くの資源や資材を海外に依存しており、ウクライナ侵略のように、ひとたび世界のどこかで紛争が起きれば、海外からの調達が不安定となり、県民生活や本県の産業に大きな影響を及ぼすことは明らかです。
 こうした事態に備えるためには、これまで以上に、地域の資源を有効に活用していく視点が重要だと考えますが、今後、活用が期待される地域の資源の一つに、下水を処理する際に副次的に発生する「下水汚泥」があります。下水汚泥は、廃棄物として扱われることもありましたが、現在では、様々な分野に利用できる高いポテンシャルを有する資源として注目されています。本県でも、下水汚泥量は年々増加しているものの、平成18年度以降は、ほぼ全量が廃棄されることなく、セメントや堆肥の原料として有効活用されています。しかしながら、国土交通省によれば、全国で発生する下水汚泥が有する有機物の全エネルギーが、約120億kWh(キロワットアワー)にのぼることや、農産物の栽培に不可欠でありながら、ほぼ全量を輸入に依存しているリンについては、年間の需要量の約2割に相当する約5万tが含まれていることなどが示されていながら、その特性を生かした利用はまだまだ不十分な状況にあります。
 こうした中、全国の自治体では、下水汚泥を原料とした肥料を製造する取り組みが加速するとともに、下水汚泥の固形燃料化や下水汚泥中のリン回収などの研究や実証などが進みつつあります。その背景には、従来、コストが課題であったものが、様々な資材価格が高騰している中で、採算ベースに合うようになってきていることも追い風になっていると考えられます。さらに、国でも、先月6日に新たな「バイオマス活用推進基本計画」が閣議決定され、下水汚泥などを含めた総合的なバイオマスの利用の推進が重点化されたところです。
 資源に乏しい我が国が、世界有数の経済大国になることができたのは、機を逸することなく、資源を有効に活用する技術の開発やその普及にしっかりと取り組んできたからだと思います。私は、世界的な資材価格の高騰が続く今こそ、地域の資源に目を向け、行政と民間が連携しながら、エネルギーや資材を地元で確保する取り組みを進めていくことが重要だと考えます。
 そこでお尋ねします。
 世界的に資材価格が高騰し、安定した調達も困難となっている現在、地域の有効な資源として高いポテンシャルを有する下水汚泥の活用に向け、今後どのように取り組まれるのか、ご所見をお伺いします。

 次に、「岩国・和木地域の道路整備」についてお尋ねします。
 岩国・和木地域の約8割を占める中山間地域は、豊かな自然や優れた景観、肥沃な土地から生まれる豊富な農産物など、平地には無い価値を有しており、地域の住民はもとより、県民全体の貴重な財産です。一方で、中山間地域では、高齢化や人口の減少に伴う集落機能の低下、就業の機会の不足、生活を支えるサービスの低下などが住民の暮らしに深刻な影響を及ぼすなど、解決すべき課題は多岐にわたっています。
 このため、私は、交通手段のほぼ全てを自動車に頼る中山間地域において、「発展や生活の基盤となる道路は『住民の命綱』」との強い思いで、地域の皆様が将来にわたり、安全で安心して住み続けることができるよう、これまでも、幹線道路から生活道路に至る道路整備の必要性や、維持管理の重要性をきめ細かく訴えてきました。
 そこで、岩国・和木地域の中山間地域の道路整備と、維持管理の充実の2点について、県の認識や今後の取り組みについて質問します。
 まず、中山間地域の道路整備についてです。
 この地域の道路は、急峻な山間部の山腹や、谷沿いの地形といった厳しい地形条件を抱えていることもあり、依然として、すれ違いが困難な箇所や、見通しが悪く事故の危険性が高い箇所が多く存在するなど、スムーズで安全な交通の確保が出来ているとは言い難く、その解消が急がれます。私は、県がこれまで進めてこられた道路整備の効果が、目に見えて現れていると感じている一方で、今のペースでは、人口減少や高齢化の進行、地域活動の多様化などの社会情勢の変化に対応できなくなるのではないかと危惧しています。
 このため、道路の整備にあたっては、国や県の道路事業の予算に加え、基地周辺地域の振興を図るため、県や周辺市町に交付される基地交付金を積極的に活用し、整備をより一層加速化させ、例えば、「地域の命綱」である県道徳山本郷線や県道岩国錦線などの整備を計画的に推進していくべきと考えます。
 次に、維持管理の充実についてです。
 道路の維持管理は、日々の草刈りや舗装、区画線等の補修をはじめ、災害時における土砂撤去、冬季の除雪や凍結剤の散布など多岐にわたり、県は、厳しい財政状況の中、予算を確保し、様々な工夫や効率化を図りながら、サービスの維持に努められています。しかしながら、近年の人件費や材料費の急激な高騰を踏まえると、草刈り面積や、舗装・区画線の補修範囲が減少し、必要な維持管理を行うことができなくなり、その結果、道路を利用する方へのサービス低下に繋がるのではないかと、大変不安に思っています。このため、既存の道路の安全性や使いやすさを高め、道路を利用する方へのサービス向上を図るため、草刈り頻度や、舗装補修等に関する維持管理の水準を定め、橋梁やトンネルのように、補修計画を策定した上で、必要な予算をこれまで以上にしっかりと確保し、計画的に維持管理を実施していくべきだと考えます。
 そこでお尋ねします。
 岩国・和木地域の活性化や、道路を利用する方々へのサービスの向上を図るため、道路の整備と維持管理を一体的かつ計画的に推し進めていくべきと考えますが、今後どのように取り組まれるのか、ご所見をお伺いします。

 最後に、「今後の警察行政・公安委員会」についてお尋ねします。
 公安委員会は、強い執行力を持つ警察の民主的運営と政治的中立性を確保することを目的に設置され、その委員には、県民の良識を代表する、豊富な経験と高い見識を有する方が選任されています。
 こうした重責にある公安委員を、平成25年から3期9年にわたり務めてこられたのが、弘田公安委員長です。
 弘田委員長は、弁護士として、法曹界で積み上げられた揺るぎない実績と、豊富なご経験に基づき、これまでの枠にとらわれない柔軟な発想で、県警察の管理と県公安委員会の円滑な運営、そして何より、県警察に対する県民の信頼の醸成に大きなご貢献をしてこられました。
 例えば、緊急走行時でないときに、パトカーや白バイが赤色回転灯を点灯して走行する光景は、今では当たり前のように見かけますが、かつては、警ら中でないパトカーや白バイが赤色回転灯を点灯しながら移動するようなことはありませんでした。
 しかし、弘田委員長は、事件や事故の抑止に繋がるとの理由から、粘り強く働き掛けを続けられ、現在のように、パトカーや白バイが移動中やパトロール中に常に赤色回転灯を点灯するよう徹底されました。
 また、児童虐待の相談対応件数が増加し続ける中、その重要性が増している児童相談所の体制強化の一環として、児童相談所に警察官が駐在することの必要性を強く訴えられ、それを実現されたともお聞きしています。
 現行の公安委員会制度となって70年余りが経とうとしていますが、弘田委員長のリーダーシップの下、そのご指示やご助言によって県警察が取り組んでこられたことは、着実に根を張り、芽吹いてきていると感じています。
 未だ収束が見えないコロナ禍や、急速に進むデジタル化など、我々の生活を取り巻く環境が大きく変化する中で、警察の不変の使命は、国民の生命、身体、財産を守ることであると考えます。
 しかしながら、他県ではありますが、警察が組織として警護していた安倍元総理が銃撃されるなど、警察の使命を全うできているとは言い難い事態も生じ、警察への信頼が揺らぎかねない状況です。
 本県の警察にも、現在取り組んでいる、あるいは今後取り組むべき様々な課題等があると思いますが、こうした中で、この度、任期とは言え、弘田委員長がご退任されますことは、誠に残念です。弘田委員長のこれまでのご貢献に心から敬意を表しますとともに、弘田委員長が残された有形無形のご功績を、これからの県警察の礎にしていただきたいと考えています。
 そこでお尋ねします。
 弘田公安委員長は、これからの警察行政、及び警察を管理する公安委員会について、どのように考え、どのようなことを望まれるのか、お伺いしまして、私の一般質問を終わらせていただきます。
 ご静聴、ありがとうございました。


(答弁者;村岡知事)
 畑原議員の御質問にお答えします。
 まず、脱炭素化に対応する水素社会実装の推進についてです。
 国の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」において、水素はカーボンニュートラルのキーテクノロジーとして位置付けられ、政策ツールを総動員して、その利用や輸送、製造の取組を進めることとされています。
 私は、こうした国の動きに呼応しながら、瀬戸内コンビナートから大量かつ高純度の水素が生成され、高度なハンドリング技術を有する本県の強みを最大限活かし、水素先進県を目指した取組を加速させることが重要と考えています。
 このため、この度、取りまとめた「やまぐち産業脱炭素化戦略」の骨子案において、水素の利活用の推進を先行プロジェクトの中に掲げ、水素の社会実装に向けて、新たな技術開発の促進による産業振興や地域づくりに取り組むこととしています。
 まず、新たな技術開発の促進による産業振興に向けては、産業技術センターに設置している「イノベーション推進センター」を中核に、研究開発のステージに応じ柔軟に対応可能な補助金を活用し、先進的な研究開発・事業化を促進しています。
 こうした取組を通じて、再生可能エネルギーを活用したアルカリ水電解装置や水素ステーションなど、来るべき水素社会を見据えた優れた製品が県内企業から生まれるなど、着実な成果につながっています。 
 今後は、更なる裾野の拡大と事業化に向けた支援を強化するとともに、再生可能エネルギー由来の水素ステーションを県が率先して活用するなど、先進的な水素利活用モデルの展開による地域づくりに取り組んでまいります。
 また、地域づくりに向けては、意欲ある市町との連携が重要であることから、燃料電池自動車の購入支援など、独自で様々な取組を実施している地域の御意見も伺いながら、水素社会の実現に向けた施策を展開してまいります。
 併せて、水素利活用を進める基盤づくりとして、現在、水素サプライチェーンの構築に向け、簡易水素充填機と小型容器を活用して、物流に大きな役割を担う燃料電池フォークリフトの試験運用に取り組んでいます。
 試験運用に参加された事業者からは、エンジン式フォークリフトに比べ割高な購入経費やランニングコストに対する税制優遇など支援制度の拡充の要望が寄せられており、今後、国にも積極的に政策提言してまいります。
 私は、脱炭素という世界の大きな潮流の中、市町、企業、関係機関等との連携をより一層図りつつ、県が先頭に立って、今後とも水素先進県の実現を目指して全力で取り組んでまいります。

 次に、岩国・和木地域の道路整備についてのお尋ねにお答えします。
 本県では、人口減少や少子高齢化が急速に進行し、地域の担い手や企業等の人手不足が深刻になり、特に中山間地域では生活の機能の確保が困難な状況が生じるなど、地域を取り巻く環境は厳しさを増しています。
 私は、こうした中にあっても、活力を維持・創出し、持続可能な地域づくりを推進するためには、地域の課題やニーズを踏まえ、地域間の交流・連携や、住民の日常生活を支える道路の整備等が重要であると考えています。
 このため、やまぐち未来開拓ロードプランに基づき、厳しい財政状況のもと、選択と集中の視点に立ち、重点的・計画的な道路の整備や、適切な維持管理に取り組んでいるところです。
 まず、中山間地域の道路の整備については、玖(く)北(ほく)地域を通過する幹線道路である国道434号の宇佐(うさ)地区や、災害時等に国道187号の迂回路としても機能する県道徳山(とくやま)本郷(ほんごう)線の市(いち)ケ(が)原(はら)地区において、バイパス整備などを、鋭意進めているところです。
 しかしながら、依然として、改良が必要な箇所が残っていることから、お示しの再編関連特別地域整備事業も活用し、住民生活の利便性の向上や産業の振興に寄与する道路の整備を、引き続き、地域のニーズをきめ細かく把握しながら、計画的に進めていく考えです。
 具体的には、県道岩国(いわくに)錦(にしき)線の大原(おおはら)地区において、幅員が狭い箇所や、見通しの悪い箇所等の解消に向け、詳細な調査や設計に速やかに着手するなど、スピード感を持って、取り組んでまいります。
 また、道路の維持管理については、人件費や材料費が高騰する中にあっても、私は、利用者の安心・安全な通行を確保するため、草刈りや舗装の補修等により、道路を良好な状態に保つことが重要であると考えています。
 このため、道路の建設時から、草刈りをはじめとした維持管理も考慮した整備を行うとともに、供用開始後は、交通安全上、支障が生じるおそれのある箇所等の草刈りを、重点的に実施することとしています。
 また、舗装の補修については、損傷状況や路線の重要性など、これまでの視点に加え、予防保全の考え方も取り入れた長寿命化計画を、今年度中に策定することとしており、今後もより一層、維持管理費の縮減や平準化を図りながら、必要な予算の確保に努めてまいります。
 私は、今後とも、地域の活力創出や、県民の安心・安全の確保を図るため、岩国・和木地域はもとより、県内全域の幹線道路から生活道路に至る道路網の整備や、適切な維持管理を計画的かつ着実に推進してまいります。
 その他の御質問につきましては、関係参与員よりお答え申し上げます。

(答弁者;小関商工労働部長)
 政府関係機関の地方移転を生かした産業振興についてのお尋ねにお答えします。
 ロボット技術が急速に進展する中、資源・海洋環境の調査や水中構造物の維持管理など、水中ロボット活用への期待が大きく高まっており、水中ロボット市場は今後の大きな成長が見込まれています。
 こうした中で、昨年、国内最大規模の水中ロボットの試験評価施設が岩国市に設置されたことから、県では、本施設の立地を活かして、水中ロボット関連産業の育成・集積に取り組むこととしています。
 具体的には、まず、地元市と連携して誘致した県内初となる「水中ロボットフェスティバル」を開催し、機運の醸成を図るとともに、学生や研究者等の交流の場を創出しました。
 また、水中ロボットの開発には制御装置や通信機器など多くの要素技術が必要とされ、優れた技術を有する県内企業の参入が期待されることから、施設の現地見学会やセミナーを開催し、これまでに約40社の参加がありました。
 これらの企業への支援体制を強化し、民生分野での研究開発を促進するため、先進的な水中ロボット研究が進む九州工業大学社会ロボット具現化センターと産業技術センターが本年7月に連携協定を締結したところです。
 こうした取組を通じ、産学公連携による研究開発体制が構築されたことから、現在、施設を活用した開発・実証ができるよう、産業技術センターと艦艇装備研究所との協定締結に向けて、国との調整を進めています。
 お示しのように施設の早期活用に対する地元・企業の期待も高まっていることから、一日も早い協定締結に向けて精力的に進めてまいります。
 また、協定締結を契機に、水中ロボット関連産業の育成・集積を加速するため、産業技術センターを核とした更なる支援体制の強化や、県内外の企業・大学のシーズ・ニーズの掘り起こしを進めるとともに、国の事業等も活用しながら開発・実証の取組を支援していきます。
 県としては、岩国海洋環境試験評価サテライトの立地という優位性を最大限に生かし、水中ロボット関連産業の育成・集積に積極的に取り組んでまいります。

(答弁者;和田土木建築部長)
 資材高騰下における地域資源の有効活用についてのお尋ねにお答えします。
 近年、国内外で環境問題への関心が高まる中、持続的に発展することができる経済社会の実現が求められており、バイオマス等を活用した地産地消型エネルギーシステムの構築や地域資源循環の取組を推進することは重要です。
 とりわけ、下水汚泥については、地域の有効な資源として高いポテンシャルを有することから、そのリサイクルの推進は、地球温暖化防止や循環型社会の形成等に大きく貢献するものと考えています。
 このため、県では、「山口県バイオマス活用推進計画」に基づき、下水汚泥の再資源化や、汚泥の処理過程で発生するメタンガスのエネルギー利用の取組を進めているところです。
 具体的には、下水汚泥については、約8割をセメント原料として、約2割を堆肥として再利用するとともに、メタンガスについては、県内4市の下水処理場において、発電に利用しています。
 こうした中、国において、お示しの新たな「バイオマス活用推進基本計画」が閣議決定され、下水汚泥中の有機物のリサイクルについて、堆肥やエネルギー等に利用する割合を増やしていく方針が示されたところです。
 この方針を受け、県では、下水汚泥の堆肥化やエネルギー利用等の更なる促進に取り組むこととしており、今後、国の動向や新技術、先進事例等についての情報収集を行うとともに、担当者会議等の場を通じて、市町との共有を図ってまいります。
 また、本県ではセメント原料への資源循環システムが既に確立している一方、堆肥化やエネルギー利用等へ転換するに当たっては、その需要や事業採算性などの課題もあることから、市町や民間事業者の意見も聞きながら、本県の実情に応じた下水汚泥のリサイクルの進め方について検討していく考えです。
 県としては、今後とも、市町や民間事業者と連携し、下水汚泥の地域資源としての有効活用に向けた取組を積極的に進めてまいります。

(答弁者;弘田公安委員長)
 私は、平成25年10月14日に公安委員に任命され、3期9年を務めてまいりました。
 公安委員就任当時の知事は山本繁太郎氏であり、高校の同級生でございますが、平成26年1月9日に病気のため知事を辞任後、同年3月15日には65歳の若さで逝去されました。
 したがいまして、山本前知事が公安委員としての私に何を期待したのか、聞くことはかないませんでした。
 ただ、平成25年当時、山本前知事の県づくりの基本的な方向性としての「5つの全力」の一つが「安心、安全力の確保」で、当時の県警察は運営指針の基本姿勢に「県民の期待と信頼に応える警察」を掲げておりました。
 この運営指針の基本姿勢は、平成26年から「県民の期待と信頼に応える強い警察」となり、平成27年からは「安全・安心な社会の実現」をサブタイトルに掲げ、以降、今日に至るまで継続されております。
 この9年間の取組状況を振り返りますと、令和3年の数字ではありますが、刑法犯の認知件数が9年前に比べて約6割減少、交通事故死亡者が統計を取り始めた昭和26年以降最小の34人を記録するなど、着実な成果を上げている分野もある一方で、解決しなければならない課題もまだまだございます。
 例えば、うそ電話詐欺被害やストーカー、DV等の人身安全関連事案については、依然として高い水準で推移しているほか、交通死亡事故に占める高齢者の割合は高く、いずれも対策は道半ばの状況でございます。
 また、急速に拡大するデジタル化社会の安全・安心を確保するために、警察自身もデジタル化を着実に進めていかなければなりません。
 加えて、周南警察署をはじめとする、老朽化した警察署の集中的な建て替え整備を進め、警察の活動を支える強靭な基盤を作っていかなければなりません。
 このような課題に対しては、これからも県警察が、組織一丸となって的確に対応していただくことを期待して止みません。
 さて、公安委員会制度は、ご高承のとおり、警察行政の民主的運営、政治的中立性の確保の目的で導入された行政委員会であります。県においては「県警察を管理する」とされております。
 私は、当初は面食らいました。
 具体的には何をどのように管理するのでしょうか。
 当時の県づくりの基本的方向性と県警察の運営指針の基本姿勢は、本当に、公安委員としての視点を示唆してくれておりました。公務というのは、まさに「法の支配の確立と公共への奉仕」であります。
 公安委員会における膨大な範囲にわたります決裁案件、報告案件に対しては意見を述べます。これについても、やはり「県民の期待と信頼に応え、安全、安心の確保につながる決裁判断ができるか」、或いは「報告されることに対して的確、相当な意見が言えるか」これを基準として実践することが9年間の私の経験を通じて得た結論でございます。
 ちなみに、当初の3年間は、決裁案件も、報告案件も、法律或いは、組織の運用実態等について基礎知識を欠いておりますため、法曹出身者であります私から見ましても、とっさに案件を理解できずに、何度戸惑ったことがあるかわかりません。
 公安委員の1期3年の期間は、大半の委員が、度々戸惑いながら過ぎて行くと感じられるのが実情ではなかろうかと思いますが、公安委員の責務は、決裁判断と意見を述べることにございます。もちろん、県警察に相談するわけにはいきません。
 今、退任を迎えるこの時点におきましても、公安委員としての責務遂行能力、判断能力の未熟さに恥じ入るばかりでございますが、実践の基準としてきたことは合理的であったと思っております。
 もう一度言わせていただきますが、必要なことは「県民の期待と信頼に応える」「安全・安心な社会の実現」のための視点でございます。この視点を常に自らの判断基準に置くことができるかどうかということに尽きると、今でも思っております。
 私は、今後も一県民として、公安委員会制度の発展、警察行政の民主的運営のために陰ながら尽力していきたいと心から思っております。
 私がこれからの警察に望むことも、まさに、この運営指針の確実な実践にほかなりません。
 最後になりましたが、異例の9年間の続投をご承認いただいた村岡知事及び山口県議会の益々のご活躍を祈念いたしまして、答弁を終わらせていただきます。
 ご清聴ありがとうございました。